介護職の利用者との関わり方のコツ:特養勤務で得た寄り添い方を紹介

利用者と笑顔で会話する介護職 介護
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元介護職員のShinoyaです。

 

介護の仕事を始めてしばらく経つと、多くの人がぶつかる壁があります。

それは「利用者さんとの関わり方」です。

優しく接しているつもりなのにうまく会話が続かない、思うように信頼関係が築けない…。そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

私自身も、特別養護老人ホームで介護士として働き始めた当初は、毎日の関わりに戸惑いの連続でした。

しかし、少しずつ工夫を重ねるうちに「心が通う瞬間」が増え、介護の仕事がぐっと楽しくなっていったのを覚えています。

この記事では、実際に特養で働く中で感じた「利用者との関わり方の工夫」と「心を寄せるためのヒント」を、同じように悩むあなたに向けてお伝えします。


「優しくする」だけでは伝わらない ― 関わりの難しさを知る

介護の現場に入ってまず感じたのは、「優しく声をかける」だけでは利用者さんの心には届かないということでした。

こちらがどんなに明るく接しても、利用者さんの反応が冷たかったり、時には怒られてしまうこともあります。

それもそのはずです。利用者さんは、さまざまな背景や思いを抱えています。

病気や認知症、環境の変化による不安、そして「できていたことができなくなる」ことへの悔しさ――。そのひとつひとつが、心の奥に積もっているのです。

介護の関わり方は、マニュアル通りにはいきません。

だからこそ、相手の「今の気持ち」を感じ取ることが大切だと痛感しました。


「観察する力」を磨く ― 言葉よりも表情を読む

私が特養で働く中で最も意識していたのは、「観察すること」です。

たとえば、同じ言葉でも、日によって反応が違う方がいます。

「おはようございます」と声をかけても、ある日はにこやかに返してくれるのに、別の日は目も合わせてくれない。

そんな時、「今日は機嫌が悪い」と決めつけるのではなく、「もしかしたら眠れなかったのかな」「体調が優れないのかも」と背景を想像します。

その小さな“気づき”が、信頼関係を育てる第一歩になります。

実際に私は、朝の表情や食事のペース、歩き方を観察して「今日は少し疲れているな」と感じたときは、無理に会話をせず、静かに寄り添うようにしていました。

すると、利用者さんから「今日はそっとしておいてくれて助かったよ」と言われたことがあります。

言葉にしなくても伝わる関係は、観察することから始まります。


「名前で呼ぶ」ことの大切さ ― 尊厳を守る関わり

利用者さんとの距離を縮めるために、私が意識していたことの一つが「名前で呼ぶ」ことです。

介護の現場では、「○○さん」と苗字で呼ぶのが一般的ですが、時には「○○さん、今日はどうされましたか?」と目を見て、しっかりと名前を口に出すことが大切です。

特に認知症の方にとっては、自分の名前を呼ばれることで「自分がここにいる」と感じることができます。

私が担当していた利用者さんの中にも、普段は言葉が少ない方が、名前を呼ぶと微笑んでくれることがありました。

介護は「お世話をする」仕事ではなく、「その人らしさを支える」仕事。

名前を呼ぶことは、相手の尊厳を尊重する最もシンプルで、でもとても深い関わり方の一つです。


「否定しない」関わり方 ― 認知症ケアの現場で学んだこと

特養では、認知症の方と関わる機会が多くあります。

私が新人のころ、よくやってしまっていたのが「それは違いますよ」と正そうとする対応でした。

たとえば、「もうすぐ娘が迎えに来るの」と言う利用者さんに、「お嬢さんはもう来られませんよ」と伝えてしまったことがあります。

その瞬間、利用者さんの表情が曇り、涙を流されたことを今でも覚えています。

それ以来、「現実を訂正する」よりも「気持ちに寄り添う」ことを大切にするようになりました。

「そうなんですね。娘さんに会えると嬉しいですね」と共感の言葉を返すだけで、安心された表情を見せてくれたのです。

認知症ケアにおいては、「正しさ」よりも「安心感」。

相手の感じている世界を否定せず、共にその世界を歩むような姿勢が求められます。


「その人の人生」を知る ― 背景を理解すると関わりが変わる

特養で働いていて、最も関わりが深くなった利用者さんの一人に、元教師だった方がいらっしゃいました。

いつも厳しい表情で、なかなか心を開いてくださらなかったのですが、ある日、昔の教え子の話をきっかけに笑顔を見せてくださったのです。

その瞬間、「この方は“先生”としての誇りを持って生きてこられたんだ」と気づきました。

それ以来、私はその方に対して「先生」と呼びかけるようにしました。

すると自然と会話が増え、食事や入浴介助の際も穏やかに応じてくださるようになったのです。

介護は、「今ここにいる人」とだけ向き合う仕事ではありません。

その人が歩んできた人生、価値観、誇り――そうした背景を知ることで、関わり方がぐっと変わります。


「ありがとう」を伝える ― 双方向の関係を築く

利用者さんとの関係は、「介護士が支える側」「利用者さんが支えられる側」だけではありません。

日々の中で、私たちもたくさんのことを教えられ、励まされています。

たとえば、夜勤明けで疲れている時に、「いつもありがとうね」と声をかけてもらったことがあります。

その言葉にどれだけ救われたか分かりません。

だから私は、介助が終わったあとに必ず「今日もありがとうございました」と伝えるようにしています。

「ありがとう」を伝える関係は、対等で温かい信頼を育てます。


まとめ ― 利用者さんとの関わりは「日々の積み重ね」

介護の現場では、日々の業務に追われて心が疲れてしまうこともあります。

でも、関わりの中で見せてくれる利用者さんの笑顔や一言が、何よりのご褒美です。

大切なのは、完璧を目指すことではなく、少しずつ「寄り添える時間」を増やしていくこと。

その積み重ねが、やがて深い信頼関係へとつながっていきます。

もし今、「どう関わればいいのか分からない」と悩んでいるなら、まずは「観察する」「名前を呼ぶ」「否定しない」この3つを意識してみてください。

きっと少しずつ、あなたの優しさが届き始めるはずです。

介護の仕事は決して楽ではありませんが、人の心と心がつながる瞬間に立ち会える、とても尊い仕事です。

今日も、あなたの優しさが誰かの安心につながっています。

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