近年、「自宅葬(じたくそう)」という言葉を耳にする機会が増えました。
式場を借りず、自宅で故人を見送るこのスタイルは、家族だけのあたたかい時間を大切にできる葬儀の形です。
本記事では、「自宅葬の流れ」や「準備・方法」をやさしく解説し、初めての方でも安心して進められるようにお手伝いします。
1. 自宅葬とは?〜小さくても心のこもったお見送り〜
自宅葬とは、葬儀場を使用せずに自宅で通夜・葬儀・告別式を行う方法です。
葬儀屋に依頼しながらも、家族や親しい人だけで静かに見送る「家族葬」の一形態として人気が高まっています。
かつては葬儀といえば自宅で行うのが一般的でしたが、現在では式場利用が主流。
しかし、新型コロナウイルスの影響や「大切な人を身近な空間で見送りたい」という想いから、自宅葬を選ぶ人が再び増えています。
- 故人の思い出の詰まった場所でお見送りできる
- 費用を抑えられる
- 身内だけでゆっくり過ごせる
こうした理由から、特に高齢の方や少人数葬を希望するご家族に選ばれるケースが増えています。
2. 自宅葬の基本的な流れ
自宅葬は「式場葬」と比べて自由度が高い一方、準備や手配の流れをしっかり把握しておくことが大切です。
以下は一般的な自宅葬の流れです。
① ご逝去〜安置
ご自宅で亡くなった場合は、まず医師に連絡し、死亡診断書を受け取ります。
病院で亡くなられた場合は、葬儀屋に連絡してご遺体を自宅へ搬送してもらいます。
自宅では布団の上、または安置台を用意して安置します。
② 葬儀屋への依頼
自宅葬に対応している葬儀屋を選び、流れを相談します。
葬儀屋が搬送・ドライアイス・祭壇設置・火葬手続きなどをサポートしてくれます。最近では「自宅葬プラン」を用意している業者も増えています。
③ 枕飾り・納棺
安置後、線香・花・水などをお供えする「枕飾り」を整えます。
納棺の際は、故人の好きだった衣服を着せたり、思い出の品を一緒に入れるなど、ご家族の手で見送りの準備を行います。
④ 通夜・葬儀・告別式
自宅での通夜は、親族中心で行うことが一般的です。
祭壇をリビングなどに設け、僧侶をお呼びして読経をいただきます。
翌日の葬儀・告別式も同じ場所で行い、焼香・読経・お別れの花入れなどを行います。
⑤ 出棺・火葬
葬儀後は霊柩車で火葬場へ向かい、火葬を行います。
火葬終了後は遺骨を骨壷に納め、再びご自宅へ戻って「後飾り祭壇」を設け、初七日などの法要へと続きます。
3. 自宅葬を行う際の準備と注意点
① スペースの確保
祭壇を設けるには、4〜6畳ほどのスペースが理想です。
遺族・僧侶・参列者が出入りできるよう、家具の配置を工夫しましょう。
② 近隣への配慮
読経や焼香などで香りや音が出るため、事前に近所へ一言伝えておくと安心です。
また、車の駐車場所も確認しておきましょう。
③ 火葬場までの距離
都市部では火葬場が混雑していることも多く、予約が必要な場合があります。
自宅から近い火葬場を選ぶと移動の負担が軽減されます。
④ 宗派や形式の確認
菩提寺がある場合は、宗派の形式に沿った葬儀を行うよう事前に相談を。
特に読経のタイミングや戒名の有無などは、宗派によって異なります。
4. 自宅葬にかかる費用の目安
自宅葬の費用は、内容によって大きく異なりますが、一般的には以下のような目安です。
| 項目 | 費用の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 葬儀屋プラン料金 | 15〜40万円 | 搬送・祭壇・ドライアイス・運営費など |
| 火葬料金 | 0〜7万円 | 自治体により異なる(公営は安価) |
| 僧侶へのお布施 | 3〜10万円 | 読経・戒名など |
| 返礼品・飲食費 | 0〜5万円 | 簡易な軽食・お供え物など |
総額では20〜60万円程度が多く、式場葬に比べるとかなり抑えられます。
ただし、安さだけでなく「どんな形で見送りたいか」を基準に選ぶことが大切です。
5. 自宅葬のメリットとデメリット
メリット
- 費用を抑えられる
- 時間に追われずゆっくりお別れできる
- 故人を身近に感じられる
- 形式にとらわれない自由な葬儀ができる
デメリット
- スペースが限られる
- 準備や片付けの負担がある
- 近隣への配慮が必要
とはいえ、葬儀屋がしっかりサポートしてくれれば、多くの不安は軽減されます。
最近では「搬送・祭壇・火葬までワンストップ」で対応してくれるプランも増えています。
6. 自宅葬を行うときに頼れる相談先
自宅葬を検討している段階で、まずは地元の葬儀屋に相談するのが安心です。
特に「自宅葬対応」「少人数葬プラン」「福祉葬対応」などの記載がある業者を選びましょう。
経済的な負担を軽くしたい場合は、国民健康保険、後期高齢者医療制度の葬祭費の支給もあります。
条件に該当するかもしれないと思ったら役所の福祉課に相談してみましょう。
7. まとめ〜自宅葬は「心で送る」葬儀〜
自宅葬は、豪華さよりも「心のこもった時間」を大切にできる葬儀です。
慣れ親しんだ自宅で、ご家族や親しい方々とともに静かにお別れをすることで、深い感謝とやすらぎを感じられるでしょう。
初めての葬儀で不安がある方も、信頼できる葬儀屋に相談すれば、搬送から火葬まで丁寧にサポートしてもらえます。
「自宅でお見送りしたい」という想いを、どうか大切にしてください。


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