葬儀の心づけはいらない?:現役葬儀屋が語る本音

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はじめに:心づけを辞退する時代へ

現役葬儀屋のShinoyaです。

「葬儀のとき、心づけは必要ですか?」

葬儀の打ち合わせのときによくある質問です。

昔から日本では、葬儀に関わる方々に「心づけ」を渡すのが一般的でした。
運転手、納棺師、火葬場の係員などに感謝の気持ちを包むという習慣は、かつては礼儀として浸透していました。

しかし近年では「葬儀に心づけはいらない」という考えが全国的に広がっています。

この記事では、葬儀屋の立場から見た「なぜ心づけはいらないのか」「断る理由」「感謝の伝え方」について詳しくお伝えします。


心づけとは?昔ながらの慣習とその背景

「心づけ」とは、葬儀や冠婚葬祭などの場で、スタッフや関係者へ「お世話になります」「よろしくお願いします」という気持ちを込めて渡すお金のことです。

封筒には「志」や「寸志」「御礼」などと書き、金額は千円~数千円が相場。
渡す相手は、霊柩車やマイクロバスの運転手、納棺師、火葬場の係員など。
地域や人によっては、式場スタッフにも渡すことがあるなど、長く続いてきた風習のひとつです。

元々は、葬儀が「人の手」で支えられていた時代の名残でもあります。
葬儀屋を使って葬儀をするのが主流となる前の、地域の人たちや親族、近所の方々が協力して行う共同作業だった時代には、「少しでも感謝を形に」という気持ちで、自然に心づけを渡していたのです。


葬儀屋が「心づけはいらない」とお伝えする理由

それでは、なぜ今では「葬儀で心づけはいらない」という流れが主流になっているのでしょうか。
葬儀屋の立場から、その背景を具体的に説明します。


料金体系の明確化で「心づけ込み」になっている

ひと昔前の葬儀では、料金の内訳があいまいで、「人件費」「サービス料」といった項目がはっきりと示されていないことも珍しくありませんでした。

しかし現在は、消費者保護や公正な取引の観点から、葬儀料金の明確化が求められています。

打ち合わせでは必ず見積書を用いて内訳の説明をし、ご遺族に納得していただいた上で契約をしますし、金額が分からないままサインをいただくことはありません。

つまり、既に心づけ分を料金に含めているため、改めて個人に渡す必要がないのです。


トラブル防止と平等な対応のため

葬儀屋が心づけを辞退する最も大きな理由のひとつが、トラブル防止です。

心づけを渡す側の気持ちは純粋な「ありがとう」でも、受け取る側によっては「不公平」と感じるケースがあります。

例えば、同じ式場で同じ業務をしているスタッフの中で、一部だけが心づけを受け取った場合、「あの人はもらっていた」「私はもらっていない」といった問題が起こりかねません。

また、金額やタイミングによってはお客様同士での誤解を生むこともあります。

そのため、スタッフの努力や誠意は、社内評価として正当に反映される仕組みを整えている葬儀屋がほとんどです。


葬儀は“お金ではなく心”で送る時代に

葬儀の形は時代とともに大きく変わりました。

かつてのような大規模な葬儀から、近年は家族葬・一日葬・直葬など、
小規模で心のこもった葬儀へと変化しています。

葬儀の本質は「故人を偲び、感謝を伝えること」。
そのため、「お金を渡すことで感謝を示す」というよりも、「言葉で感謝を伝える」ことがより重視されるようになりました。

スタッフも、心づけをもらうことよりも、「丁寧にしてくれてありがとう」「安心して送り出せました」という言葉をいただくことの方が、ずっと嬉しく、励みになります。


「どうしても感謝を伝えたい」ときの代替方法

葬儀屋として「心づけはいらない」とお伝えしても、中には「それでも何かお礼がしたい」と思われる方もいらっしゃいます。

そんなとき、私たちがよくご案内しているのが、お金以外の感謝の伝え方です。


アンケートや口コミで感謝を伝える

葬儀後には、アンケートやレビューをお願いすることがあります。
「担当者の対応が良かった」「安心して任せられた」など、具体的な言葉を添えていただけると、スタッフの励みになります。

また、社内での表彰や評価にもつながるため、最も実質的な“お礼”になるのです。

 感謝の手紙やお礼状を送る

現金ではなく、感謝の手紙を一通送っていただくことも非常に嬉しいことです。
葬儀後の慌ただしいときにわざわざご遺族が送ってくださるお手紙は、ご遺族の心からの言葉であると感じ、「この仕事をしていてよかった」と心から思える瞬間です。


お菓子やお供え物を会社宛に贈る

もし形として感謝を示したい場合は、会社宛にお菓子やお供え物を贈るのも良い方法です。
個人への金銭的な心づけではないため、受け取り可能なケースも多く、形式ばらずに気持ちを伝えることができます。


「葬儀で心づけはいらない」は“冷たい”ではなく“誠実”の表れ

「葬儀で心づけはいらない」と言うと、「冷たく感じる」「心が通わないのでは?」と思う方もいらっしゃいます。

しかし実際には、その逆です。
葬儀屋が心づけを辞退するのは、お客様の気持ちを平等に扱い、誠実に対応するためです。

また、葬儀費用の中でスタッフの努力がきちんと評価される仕組みを整えることで、
お客様は「余分な支払いを心配せずに葬儀に集中できる」環境が生まれています。

「葬儀で心づけはいらない」という姿勢は、お客様への安心と信頼を守るための取り組みでもあるのです。

ちなみに、この記事で解説している内容とは相違がありますが、筆者の会社は心づけの受け取りを禁止してはいません。

ご遺族に「心づけはどうすればいいか」と聞かれたときはもちろんお断りしていますが、それでも「感謝の気持ちです」と心づけを渡されたときはありがたく受け取っています。

理由としては、どのような形でもご遺族の気持ちを無下にはしたくないという考えがあるからです。

心づけをいただけるときは、葬儀に携わった全てのスタッフが、感謝と同時に「ご遺族のためにお手伝いができてよかった」と素直に嬉しく思っています。


葬儀屋としてのお願い:「感謝の気持ちは言葉で伝えてください」

心づけを渡す代わりに、ぜひ葬儀当日や打ち合わせの際に、
一言でも構いません、「ありがとう」と伝えてください。

その言葉だけで、スタッフは十分に報われます。

「故人を無事に送り出せてよかったです」

「丁寧に対応してくれて助かりました」

こうした言葉が、次のお客様へのより良いサービスにつながります。
葬儀屋にとっての“心づけ”は、もはや封筒ではなく、お客様の言葉なのです。


まとめ:「葬儀で心づけはいらない」はこれからの標準に

かつては当たり前だった心づけ文化も、今は時代の変化とともに姿を変えました。
葬儀屋が心づけを辞退するのは、お客様の安心と平等を守り、感謝をより正直な形で受け取るためです。

  • 料金はすでに心づけを含んだ明朗会計

  • 個人への金銭授受によるトラブルを防止

  • 感謝は「言葉」や「アンケート」で十分伝わる

葬儀とは、“故人を想う時間”です。
心づけの有無で悩むよりも、どうか故人との最期の時間を大切に過ごしてください。

そして、もし葬儀屋のスタッフがあなたの支えになれたと感じたら、
その時はぜひ一言、「ありがとうございました」と伝えてください。



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